能楽鑑賞などなどの記録。  
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狂言ござる乃座 55th

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附子
シテ 野村裕基
アド 野村遼太
   野村太一郎

 

清水座頭
シテ 野村万作
アド 野村萬斎

 

弓矢太郎
シテ 野村萬斎
アド 石田幸雄
   月崎晴夫
   高野和憲
   竹山悠樹
   深田博治
   内藤連
   中村修一
   飯田豪
   岡聡史


※2017年3月30日(木) 国立能楽堂にて。

 

 

というわけで、萬斎さまの「ござる乃座」に行ってきました〜!
久々の本狂言の公演。とっても面白かったです!


附子。

 

裕基、遼太に比べると、主人役という役柄もあってか、太一郎は断然お兄さんで、完成度が全然違ってました。破られてしまった掛軸や、割られてしまった茶碗に目を遣る場面など非常にウマかったです。(←上から目線。)

 

すっかり狂言方らしくなった遼太(相変わらずおカオが小さい!)に比べると、一番年少の裕基が一番ヘタっぴだったけど(笑)、それでも安心して観ていられたのは、やっぱり厳しいお稽古の賜物でしょうか。

 

遼太、裕基、太一郎と並ぶと背丈のバランスも山型になるところもイイ。泉下の万蔵たち(複数)も、さぞかし・・と、ありがちな感想がつい漏れます(笑)。

 

清水座頭。

 

お能の番組立てが意識されているような今回のプログラムで、この一曲が本当に素晴らしく、ちょっと、かなり、感動してしまいました。。。万作も萬斎さまも、やっぱり特別というか、凄いというか、改めてこの二人の存在の大きさに気づかされるというか・・・。

 

それに、物語もしゃれた外国の(笑)恋愛映画みたいで、伏線張りや、ちょっとしたどんでん返しまであって楽しい。作者の非凡を感じました。この作者が現代アメリカにでも生まれていたら、ハリウッドかブロードウェイあたりでウデを振るっていたのではあるまいか。

 

舞台には、まず女性の美男鬘をつけた、女姿の萬斎さまが登場です。思い詰めたような、きゅっと固くうつむいた顔立ちが綺麗。クリーム色の控えめな文様の入った縫箔も、品があって御洒落です。

 

彼女は杖をついている「瞽女」なのだけど、本人の話すところによれば、最近になって病により失明したいわゆる中途失明者らしい。おかげで結婚も仕事(奉公)もままならない・・と、かなり苦労している様子です。この日は清水の観音様に、祈願したいことがあってやってきたとのこと。
(←この物語では、「瞽女」という名乗りに女性芸能者という意味は、あまり強くなさそうだった。後半で小歌を披露したりしてたけど。)

 

つづいて、同じく「座頭」である万作の登場。

 

そしてこれが何というか、万作の「座頭」としての演技、特に目の不自由な人の運行の再現というか、橋掛かりの出にはとにかく際立ったものがある。本当のことを言って、この登場シーンには観ていて鳥肌が立った。

 

こつこつと静かに杖をつき、片手で周囲を探るようにして橋掛りを進むのだけど、登場のその瞬間から、彼が暗闇の中にある、その運命を文字通り手さぐりで歩んでいるのが伝わってくる。シテ方やワキ方とはまた違う、リアリティとその緊張感。そして根底にある、異形の者としてガラリと辺りの空気を変える存在感。ほんとにすごかった・・・。

 

万作も同じように清水寺に参詣に来て、こちらの願い事はなんと、『申妻』(縁結び)とのこと。結婚して子供も欲しいんです・・みたいな。ところが、先に祈願していた瞽女(萬斎さま)とぶつかってしまい、萬斎さまが俄然、ブチギレと言っていいくらい非常に怒る。


「あなたも私をからかおうと言うのね!」みたいな台詞の彼女の怒り方、だけどどことなく気弱な、相手に対して強く主張しきることもできないその様子。萬斎さまもパンフレットの御挨拶に書いているのだけど、狂言らしい「わわしい女」とは全く違っていて、光を失ってからの様々な事に彼女が深く傷つき、自分のことを弱者と思っている、そんな気配が伝わってきて、こちらも素晴らしい。

 

やがて二人のやり取りから、お互いが盲目であることを知る・・・という、繊細な機微のある物語。

 

しかし万作のほうは、台詞から察するに生来の盲目であるらしく、萬斎さまに比べると大らかで余裕がある。お酒を持ってきてるので、一杯やりませんか?と、にこやかに話しかける。

 

この時、萬斎さまのほうは『ああ、また失敗してしまった・・・』と落ち込みながら、ぎゅっと全身を固くするように座っていて、女心の伝わってくる萬斎さまの女優ぶり。そして、万作から一杯だけお酒をもらうと、ちょっとほっとしたようなリラックスした雰囲気に変わります。

 

一曲謡いましょうと、万作は「平家」を披露し(ちょっと息が苦しそうでしたが)、萬斎さまは小歌「地主の桜」でのいいお声は変わらず。場面が急に華やいで、二人で楽しそうです。お互いに盲目の二人にとって、心と声の美しさは超大切、な筈。

 

二人とも観音様のお告げを授かろうと、やがて眠ってしまうのですが、萬斎さまのほうが先に目覚めて、観音様のお告げがあった!と、喜んで先に出て行ってしまいます。

 

続けて万作も目覚め、観音様のお告げで、妻となる人と出会おうと西門のほうへと向かう・・・。

 

二人は目が見えないので、見所のほうが二人はちゃんと再会できるのだろうか・・と、ドキドキしながら見守る。万作が橋掛かりに佇んでいる萬斎さまを、そうと知らずに探し当て、お互いの杖が当たって、カチリ、と音がする瞬間がなんともロマンチック・・・。

 

そう、瞽女の願いもまた、生涯の伴侶を得ることだったわけです。「もしかして、君も独身・・・?」みたいな台詞に続けて、一緒に謡いながら心を開き合っている様子も、微笑ましく、美しく、まさしく「室町のミュージカル」でした・・!

 

やがて万作が萬斎さまの手を引いて、二人で一本の杖で歩むのですが、このときすっかり小さくなった万作に寄り添うようにして、萬斎さまが背中を曲げて小さくなっていたところが可愛かった・・。本当に素晴らしかった一番でした。

 

弓矢太郎。

 

こちらはもう、萬斎さまのカワイイ節が炸裂した鉄板の舞台。本当は臆病なのに、雄々しい扮装で強がってみせる、なんとも狂言らしい人間の世界です。面白かった。

 

途中、萬斎さまが、ずらりと居並んだ万作家の若手(?)たちの名前を挙げて行くシーンがあったのですが、万作家の弟子たちも増えて、ここで萬斎さまが「えっと、おまえ誰だっけ・・」とか言ったら面白いな、とか思ってたのですが、そんなこともなかったです(笑)。

 

壮大な(?)仕掛けで始まるのだけど、エンディングが案外あっさりしているのも狂言らしいような。

 

非常に楽しく、行ってよかったと思える公演でした。

 

 

posted by kuriko | 11:57 | 能・狂言 | comments(0) | trackbacks(0) |
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