能楽鑑賞などなどの記録。  
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CD「砧・羽衣 観世寿夫 至花の二曲」



過去はいい


現在より確実で


未来より安全

 



(・・・あれ?未来より安心、だったかな?
どこかのサイトで読んだうろ覚えの名言(?)なので、典拠不明です。。)

 

そしてこのCDは、本当に素晴らしいです。

もともとは1982年、観世寿夫を偲んで、残されていた音源をLP化して発売されたものらしい。さらに2曲ともCD化にあたって、LP版ではカットされた部分も音源を探し出して再現されたのだとか。

砧のほうはLP発売時の観世榮夫の解説によると、1976年、寿夫たちが「世阿弥座」としてヨーロッパを巡演した際に、ジャン=ルイ・バローが作った『オルセイ劇場』(現在はオルセー美術館となっている)での上演をレコーディングしたもの。

聴く前は、30年前のパリでの録音なんて大丈夫かいな?と思っていたのだけど、これが、すごいのです!

シテの悲しげな謡も、技巧を尽くす地謡の節回しも色褪せることなく蘇っています。
観客の咳払いや、シテが床をきしませる音まではっきり聴こえる。
印象的なのは、寿夫の声が悲しいときは、ひたすら悲しそうなこと。
囃子の音も、深く響きわたってとても綺麗。

そして矛盾したことを言うのだけど、実際の能楽堂で舞台を観るときみたいに、時にはシテの謡よりも囃子の音が勝って聴こえてくるような、すべてがすべて主張してやまない、聴きわけの良い子ではない臨場感がある。

小鼓はおさみゅん。大鼓は亀井忠雄。

おさみゅんの声も、忠雄やワキの閑の声も今よりずっと若い。おさみゅんの声はいささか硬くて、クリコをうっとりさせた後年の甘さと低さがまだ足りない。

あ〜ん。でもでも鼓の音は、まさしくおさみゅんの音。
深く繊細な、清らかな水が滴り落ちるような音だ。
そして忠雄の切り裂くような音は、この頃も容赦ない(笑)。

映像があれば勿論言うことないのだろうけど、舞台の緊迫感がはっきり伝わってくる録音で、逆に想像力をかき立てられる。ぱりん。と突然割って入ってくる音は、シテが杖を捨て去った音である(多分)。

オルセー劇場だった頃のオルセー駅の姿は知る由もないけれど、美術館のほうはクリコも大好き。おさみゅん、カッコよすぎる。。。また久しぶりに、涙ぐんでしまいました。。。

おさみゅんはフランス語にもご堪能だそうだから、きっとこの時もParisでのひとときを楽しまれたに違いないわね・・。

そして羽衣は、これまたLPでの金春惣右衛門の解説によると、観世寿夫がオーストラリアの女流音楽家のために、ほとんど無報酬で録音してあげたものらしい。

こちらは、寿夫の謡をクリアに楽しむことができます。
囃子の音のほうは率直に言って、ややカラリと乾き気味の録音。

白龍が登場するまでが、なんだか長いな、という印象なのだけど、一声が「本越し」という稀にしか演奏されないものだと書いてある。
春の三保の松原の風景が目に浮かぶ・・。かもしれない。クリコの想像力では、「まんが日本昔ばなし」的風景なのだけど・・。(←知らないコは、お父さんお母さんに聞いてみてね!)

寿夫の考える天女は、案外可愛らしい感じもする・・。
天上的な無垢な印象が、気品ある「いや疑ひは人間にあり・・・」の一言に醸されていて、白龍が深く恥じ入ったのも無理もない。

羽衣を取り戻すと、天女もいよいよ人間離れした本来のシャープな様子(?)で、囃子も盛り上がって、今にも真空の月世界へと昇っていきそう・・。


以下、ご参考。

砧 (1976年 パリ・オルセイ劇場にてライブ・レコーディング)
シテ   観世寿夫
ツレ   奥善助
ワキ    宝生閑
アイ   野村万之丞(現・野村萬)

大鼓     亀井忠雄
小鼓     北村治
笛       一噌幸政
太鼓     三島元太郎

地頭      観世静夫(八世 観世銕之亟)

羽衣 (1969年 梅若学院能楽堂)
シテ    観世寿夫
ワキ    観世静夫(八世 観世銕之亟)
ワキツレ 山本順之

大鼓      安福建雄
小鼓      穂高光晴
笛         一噌正之助
太鼓      金春惣右衛門

地頭    観世静夫(八世 観世銕之亟)


こちらもご参考。

posted by kuriko | 22:27 | CD/DVD(能・狂言) | comments(2) | trackbacks(1) |
コメント
クリコさん はじめまして。
いつも楽しみに読ませていただいております。

これは絶対に聴いてみたい!と、アマゾンでクリックしてしまいましたよ。
実は午前中、部屋の整理をしていて、観世寿夫師のLPが出てきて、劣化しないうちにCDに焼いておこうと思っていたところなんです(残念ながら「砧・羽衣」じゃない)。
2009/09/22 13:09 by ヨウダ
きゃ〜!ヨウダさん♪

はじめまして!コメントありがとうございます!
お役に立てたみたいて嬉しいです♪
それにしても、すごい偶然ですね。

このCD、クリコなりに大変素晴らしいと思います。
是非、大音量でお聴きください(笑)!

それに「砧」公演のほうは、榮夫の解説や本にある寿夫自身のエッセイにも、ヨーロッパでも大きな反響があったと書かれていて、それも納得の内容です。

2009/09/22 20:30 by くりこ
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