第二十回 能楽座自主公演 ―二十回記念公演―
2014.09.03 Wednesday
舞囃子
高砂
観世銕之丞
大鼓 山本哲也
小鼓 飯田清一
笛 松田弘之
太鼓 観世元伯
小舞
金岡 野村万作
独吟
野宮 近藤乾之助
一調
張良
福王茂十郎
太鼓 三島元太郎
独吟
平家 野村萬
新作舞囃子
智恵子抄
智恵子 大槻文藏
光太郎 梅若玄祥
大鼓 山本哲也
小鼓 飯田清一
笛 松田弘之
狂言
抜殻
シテ 茂山千五郎
アド 茂山正邦
半蔀
シテ 梅若玄祥 (代演)
ワキ 宝生閑
アイ 茂山正邦
大鼓 安福光雄
小鼓 大倉源次郎
笛 藤田六郎兵衛
地頭 観世銕之丞
※2014年8月31日(日) 国立能楽堂にて。
というわけで、能楽座自主公演に行ってきましたぁ〜!
例によって能楽座自主公演は、特にコレといって宣伝も告知もされていなかった印象で、ガラガラというほどでもないけど、脇正面などはスカスカという感じ。「二十回記念公演」というには、いささか寂しい見所です。
・・・素朴なギモン的に、それで結局、自主公演っていったい何のためにやっているのだろう?やっぱし思い出作りかな?
まぁそれはヨコに置いておいて、どうぞ名人上手の至芸をご堪能くださいね。というわけで、てっつんの舞囃子「高砂」から。
囃子は奔流の如く時に緩急あり、てっつんは貫録のある鯉魚の如く(?!)、そんな高砂でした。続いて、万作、乾之助、元太郎に萬とズラーリ。万作は所作のキレがすごく、萬の謡はイキがすごい。長年続いた(そして終わった?)兄弟喧嘩にも、意外な効用があったのかもしれません(?)。
乾之助の独吟は結局、助吟の金井雄資もぜんぶ一緒に謡っていて、しかしさすがに遠慮しつつなので、なんていうか、連吟というより合唱?みたいな雰囲気になってました。あるいは、綺麗な小鳥が二羽謡っているとでもいうか・・。なんだか乙女チックな雰囲気の「野宮」でした。。
「新作舞囃子 智恵子抄」はさすがに耳目に新鮮で、面白く観ました。詞が高村光太郎ぐらいだと、日本語が分かりやすく美しく、情景も頭に描きやすい。
詞章は『風にのる智恵子』と『千鳥と遊ぶ智恵子』が使われていたようです。「狂つた智恵子は口をきかない ・・・」それから、光太郎が智恵子を詠んだ一首。
光太郎智恵子はたぐひなき夢をきづきてむかし此所に住みにき
だけどもし高村智恵子も物狂いの一人として数えるならば、これはなかなか、能楽がもっとも得意とする(?)表現でありつつ、世阿弥の言っていた(便宜的/情緒的な)『物狂い』とは違う、新しい狂女物ではなかろうか。(←高村智恵子は統合失調症だったらしいので。)
これはちょっと、今後の展開にに期待大かもしんない。しかしいわゆる『能舞』以上に仕立てるのは、難しいかもしれない。鬱病が脳の風邪なら、「人間商売さらりとやめて もう天然の向うへ行つてしまつた」統合失調症は・・・、何なのだろう。
それに、光太郎と智恵子の配役も、当初予定と違って光太郎:GS、文蔵:智恵子で、これもよかった(笑)。ぽっちゃりとした狂女というのは、どうも悲壮感が足りないですからね。静かに狂う智恵子を、光太郎も静かに見つめます。
千五郎は、半分眠りつつ鑑賞。。(ごみんなさい)。でも千五郎(と七五三)って、ヒジョ〜に上手いとクリコも思う。
で、いよいよ「半蔀」だったわけですが・・。
なんと幽雪は休演で、代わりにGSだったのでした。。。・・・。う〜ん、坂本冬美コンサートに行ったら、由紀さおりが出てきた。ぐらいの違いはあるカモ。「似たようなもんでショ」と言えば、そうかもしれない(?)けど。。。
幽雪はもう退院はしてるけど、さすがに舞台は控えることになったとかで、病を得た能の妖精は、まいにち何を食べて療養しているのだろう・・。やっぱし森の綺麗な朝露とかかしら。。クリコの想像では、「松風」とか「求塚」の前シテ/ツレみたいな乙女たちが、それを毎朝集めにいくのだけど、まぁそんなことは流石に無いであろうね。。
というわけで、前シテのGSがやってきたのだけど、GSの運ビって、どこかヘンじゃないかなぁ〜?役柄によっては気にならないのだけど、膝も悪いのであろうか。ミョ〜にキビキビとした歩みの夕顔の君です。
後シテは濃い紫の長絹に、明るめの鬱金色の大口。・・あの鬱金色は瓢箪をイメージしてるのかしら。。
う〜ん。。。でもめちゃめちゃ率直な感想を言って、前シテはまだ良かったけど(?)たとえば初めて能を観る人で、あの後シテを観て、素直に「ああ、美しいな」と思える人ってどれぐらいいたのかな。。。という気もした。。
みんな無意識のうちに、すごーく脳内修正して観てるんだと思う。。紋付で舞ってる時のほうが、むしろ何とも思わないのだけど。。
閑のほうは、姿勢もキリリとして、とっても綺麗。それにやっぱしエライな〜と思った。夏の間、疲弊と自堕落の両極端を繰り返していたクリコは、ずーっとあっちにもぞもぞ。こっちにもぞもぞ。と動いていたのだけど、閑はびし!と座りつつ、シテのことを時おり、じぃっと見つめています。夏休みの宿題は、7月の間に全部終わらせてそうな雰囲気です。
もちろん思い出の世界に浸っている夕顔の君は、夏の終わりなどお構いなしです。こ〜んな、こ〜んなふうに光源氏様がお手紙書いてくれてさぁぁぁと、熱心に自作自演していたのでした☆
というわけで、今回は久々なので、感想というより単なる雑談でおしまい。。。